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2013年 04月 01日
老いと介護
最近時間を見つけて、地域医療や介護施設などの勉強をしています。
クリニックなどでは暖かく洗練されたデザインの建築が生まれつつありますが、設計の分野でも専門性が強いとされてきたためか、デザインの持つ可能性が生かされていない領域だと思うからです。特に特別養護老人ホームやグループホームなど介護施設としての機能性はもちろんですが、住まいとしてのクオリティに欠けるものが多いように思います。また、サービス付き高齢者向け住宅という日常の住生活の延長線上にあるような介護施設との中間的なビルディングタイプも出てきました。これらの設計には住宅設計の経験が十分に生かせるのではないかと思うのです。

さて、テアトル銀座で公開中のミヒャエル・ハネケ監督の「愛、アムール」を昨日視ました。この映画では、突然襲った病によって車いすの生活となってしまった妻アンヌと自宅介護する夫ジョルジュとの生活を描いています。しかし妻の病状は日に日に悪くなり、やがて寝たきりとなり、話すことも難しくなっていく。その現実に戸惑いながらも毎日同じように献身的に接する夫。ハネケ監督は、「老い」や「介護」というテーマを派手な物語に仕立て上げるのではなく、本当に日常のこととして丹念に描いています。排泄を手伝ったり、訪問介護で体を洗ってもらうシーンなど介護の現場では毎日ある風景。突然介護を受けることになってしまった妻の恥じらいや屈辱、毎日が介護の時間で過ぎて行く夫の肉体的精神的苦痛など、介護を受ける側、介護をする側の微妙な心内も2人の俳優の名演技によって描かれています。
最後は何ともつらい結末ですが、とにかく繊細ないい映画です。

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この映画を見て、改めて自分の父親と介護していた母親のことを思いました。現在は老人介護施設に入所して介護サービスを受けていますが、家にいた時は毎日よく世話をしていたなと思うと同時に、母も日常のこととして淡々と過ごしていたなと。また、父はどう思いながら世話を受けていたのだろうかと。

介護はする側も受ける側も大変ですが、お互いの苦労が少しでも緩和されるように、彼らが過ごす空間が生活の場として居心地良いものとなるように、設計者にはそれくらいしかできませんが、いつかそのような建築のお役に立てればと思っています。

できれば、自分が老いる前に(笑)

by hiroshiyamasaki | 2013-04-01 21:53